由宗刃物について

はじめまして。由宗刃物代表の田澤宏幸です。

当店は鍛造包丁製造会社と共同で、 2020年3月に立ち上げた工場直営店です。 日本伝統の手造り黒打ち包丁を中心とした幅広い品揃えで、切れ味抜群の純日本製包丁を、工場直営のお手頃価格でご提供しています。


最初に、もともとまったく門外漢だった私がなぜ包丁店を始めるに至ったか、少し経緯をお話したいと思います。

ある時、縁があり、当店のパートナーである包丁製造会社と仕事をする機会を得ました。その会社は土佐に職人を抱える創業100有余年の会社です。そこで聞かされたことは、日本の包丁市場の縮小、鍛冶職人の高齢化と若手職人の不足による生産量の減少から、日本の包丁の鍛造技術が、今後5-10年で失われる可能性がある、という事実でした。

日本最大の鍛造刃物の産地である土佐の自由鍛造技術は、日本刀の製造技術を継承し、400年以上の歴史があります。そして、現在では堺包丁の刃の7-8割を供給するなど、全国の有名産地に向けた、刃の最大の供給地となっています。つまり、土佐の鍛造技術の衰退は、同時に日本の鍛造包丁の衰退を意味するのです。鍛冶職人の仕事は過酷です。1,000度の炉を前に、気温40-50度の中で、焼入れした鋼を正確に打ち続けます。表舞台に出る職人はほんの一握りで、何十年という経験と極めて高い鍛造技術を持ち、包丁の命である刃造りを支えながら、多くの職人は下請け仕事として不安定な生活に甘んじているのが実態です。この現実を目の当たりにし、私は何としてもこの日本伝統の貴重な鍛造技術を残さなければならない、何か自分にできることはないのか、そう考えるようになったのです。



一方、その頃から外国人旅行者が急増し、 外国人の日本の鍛造包丁人気が高まっている、という朗報もありました。
私は海外の仕事が長く、日本と海外をつなぐことをライフワークとしてきました。自分の経験を活かし、この日本の包丁を海外に大きく広げることで、貴重な職人技術を継承していくことに貢献できるのではないか、と気付いたのです。
そこで、その刃物工房と一緒に海外の販路づくりを進めるとともに、国内では外国人旅行者を中心に直接販売が拡がっていきました。



由宗刃物 Yoshimune Knives

そして2019年、関西出店の話が持ち上がります。

当初、私自身が出店や運営に関わるとは夢にも思っていませんでした。ところが、この素晴らしい切れ味の日本の包丁と技術を、もっと世の中に知って使って欲しい、そしてそれを通じ、貴重な日本の伝統技術を残したい、という思いが沸いてきました。そして自分でも驚くほど自然な流れで、自分の店を出すことにつながったのです。

ところで、私は海釣りと釣った魚を自分で調理するのが趣味で、包丁に興味を持つようになりましたが、仕事で包丁に関って初めて知った事実があります。まず、切れる包丁は、食材の味を別物のように美味しく変えることです。
ある料理人さんは当店の包丁を使われ、「“切れる”のでなく“割ける”ようだ」「見たことのないような美しい断面」と仰いました。そして、鋼は錆びますが、職人によってしっかり打ち叩かれた鋼は、簡単には錆びないということです。「鍛造」包丁には機械でプレスした鋼材を使っているものがありますが、私自身は土佐包丁を使い始めてから、錆で悩むことがなくなりました。

ぜひ、多くの方に 錆びにくく、切れ味抜群の鋼の包丁の凄さ、素晴らしさを体感いただき、世界中で日本にしか存在しない貴重な鍛造包丁を、一緒に後世に残していきましょう。